「立会い」の意義
「立会い」って何ですか? 時折ご質問を受けます。
不動産の売買での、司法書士に対して支払う登記費用の項目にある「立会い」です。
依頼者からすれば、1時間ほどの不動産決済に同席しただけで数万円?とお思いになったとしても無理のないところかもしれません。
しかし、我々はただそこに座っていることで、報酬を頂戴しているわけではないのです。
不動産の買主は、代金を支払う義務があります。でも支払うには、完全な登記を得ることが条件になります。
一方、売主には、権利証や印鑑証明書など、所有権移転登記に必要な書類を買主に渡す義務があります。でも、代金をもらえることが引き換えです。
このように、「完全な登記」と「代金の支払」は引き換えに行われなければいけないのですが、現実には、登記は、書類を調えて申請してから完了するまで、1週間ほどの時間を要します。
買主は登記完了まで代金を支払わない、売主は代金をもらうまで登記必要書類を渡さない、では、両者睨み合ったまま事態は進行しません。
そこで、登記のスペシャリストである司法書士が、売主の用意した書類で間違いなく、完璧な登記をすることができますよ!と買主に対して太鼓判を押して、買主に安心して代金を払ってもらうという役割を果たしているのです。
司法書士が決済の場で発する「登記の書類は揃いました」という言葉は、「所有権移転は間違いなくできることを私が保証しますから、代金を払っても大丈夫です」という意味なのです。
そして、この重要な役割、重大な責任を負うことに対して、「立会い」という報酬を頂戴しています。
決済ができなかった、すなわち売主の用意した物が不完全だった例としては、
・実印とは異なる印鑑を持って来られた
・権利証が間違っていた
というケースが挙げられます。
印鑑や権利証の照合は、慣れた手つきで確認しているように見えるかもしれませんが、司法書士として最も緊張する場面の一つなのです。その結果で、何千万円もの大金が支払われるのですから。
報酬に疑問を持たれたら、遠慮なくお尋ね下さい。我々も、我々の仕事を理解していただくよう、もっと努力が必要だと感じます。