使いやすくなった「現物出資」
改正商法がこの4月1日より施行されています。設立や増資の手続きも従前のものより様々な面で、簡単・便利になりました。
そのひとつが今回ご紹介する「現物出資」手続です。
それにはまず、現物出資とは何か、というところからご説明いたしましょう。
会社には資本というものが必要です。基本的には有限会社300万円・株式会社なら1000万円が最低でも必要となります(注1)。通常、出資者は現金を銀行に払い込みます。しかし、必ずしも現金で用意しなくてはならない訳ではありません。例えば営業車両、パソコン、商品となる品物、事務所に使う建物、そのような現物そのものを出資してしまうという手もあるのです。それを現物出資といいます。増資の際も同じようにこの現物出資の手段が使えます。
(注1)本年2月より「確認会社」という制度ができ、資本金が1円からでも株式会社・有限会社が設立できるようになりました。詳細は本HPの「なるほど登記」バックナンバーをご覧下さい。
今までもこの現物出資という方法はありました。しかし、現物出資する財産がいったいいくらの価値があるのか評価が難しく、また会社財産の確実な保有という観点からも、現物出資をする際は、原則として裁判所に検査役の選任を申立て、出資する財産の価額を評価してもらわなくてはなりませんでした。(注2)
この検査役選任の申立は手続きも煩わしく、また検査には時間と費用がかかるため、現物出資は現実にはあまり活用されていませんでした。
(注2)一定の小額の現物出資、不動産の現物出資、有価証券の現物出資の場合、検査役の選任が不要の場合があります。
この度の商法改正で、弁護士・公認会計士・税理士等の証明書を添付すれば、上記裁判所選任の検査役の検査に代えることが出来る、という改正がなされ、従来に比べ格段に使いやすい手法になりました。日頃帳簿を見てもらっている税理士に、相談すればよいわけです。今後の現物出資の活用が期待されるところです。
ただし注意すべきは、証明した財産の価額が実価と比べて高すぎるなど、会社の「資本充実の原則」に反することになった場合、設立に関与した発起人や役員は責任を問われる恐れがあります。またその証明書を発行した弁護士等も虚偽の証明として責任を問われる恐れがあります。