自己決定権の尊重
「自己決定権の尊重」は成年後見制度の基本理念の一つです。
本人が自分のことを決める権利をできる限り尊重しよう、「こうするのがいいですよ」と何でもかんでも、後見人が決めてばかりではいけない、ということです。
生きるということには、試行錯誤しながら、たまには失敗することも含まれているはず。「人にはだまされる権利もある」という学者もいるということです。
ご本人の決定を尊重するのも程度問題ではありますが、リスクを避けるあまり、決定権を完全に奪ってしまうと、自分の人生ではなくなってしまうのかもしれません。
とはいえ、現実の後見事務においては、悩みがつきないのも事実です。
勧められるがままに、使いもしない高い買い物をしてしまう一人暮らしの方。資産は十分にあるので、無駄な買い物のために生活に窮するわけではない、販売員とのコミュニケーションが寂しさを癒している部分もある。しかし、購入した商品が封も開けられずに積み上げられる様には、理不尽なものを感じてしまいます。
自己決定は、お金の使い道だけの問題ではありません。
生活する場所、食事、身内との交際、医療など。客観的に正しいと思われることと、ご本人の決定との間で、何とか良いバランスを取っていきたいものです。