いつから始まる?任意後見
Tさんの「任意代理契約」はTさん自身が希望したときに始まることにしました。
では、「任意後見契約」はいつ始まるかといいますと、これは「任意後見法」で決まっています。任意後見監督人が選任された時に契約内容が開始するのです。
もっと順を追ってご説明しましょう。
まず「任意後見契約」は必ず公証人役場で、公正証書で契約しなければなりません。契約の一方の当事者が判断能力が失われた後に効力を発生するわけですから、もし自分に不利益なことが行われてもそれを主張することができないかもしれません。ですから、契約内容を公的にはっきりとさせて本人を保護するために、公正証書にすることが求められているのです。
そして契約書が作成されると、公証人役場から東京法務局に対して、「後見登記」が申請されます。Tさんに司法書士のKが任意後見人予定者となった、その代理権はこれとこれとこれだ。という内容の登記です。(この任意後見人予定者には特に資格は必要ありません。お子さんでも、ご近所の方でも、要はご本人が信頼できる方ならどなたでもOKです。)
この状態では任意後見契約はまだ始まっていません。もちろんご本人もしっかりしています。やがて判断能力が衰えてきて任意後見契約を発効する必要が生じたら、家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任を申し立てます。この任意後見監督人は必ず選任されなければなりません。契約書を公正証書にしなければならないのと同じ趣旨で、本人が自分の不利益をチェックすることができないので、その代わりに任意後見監督人が任意後見人をチェックするシステムです。
任意後見監督人を選任して欲しいと申し立てることができるのは、当の任意後見人予定者の他にご本人及び4親等内の親族です。こうして監督人が選ばれて始めて「任意後見契約」は効力を発揮します。
1、公正証書で契約する。
2、後見登記がなされる。
3、任意後見監督人が選任される。
これが「任意後見契約」の大きな特徴です。
Tさんの場合、任意代理契約を発効していても、未だ発効していなくても、ともかく判断能力が衰えてきたら、任意後見人予定者であるKが任意後見監督人の選任を申し立てて、任意後見契約を開始する段取りになっているのです。